敗血症 | ある若い女性薬剤師の物語・8

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ある若い女性薬剤師の物語

  • ある若い女性薬剤師の物語・8

    2014年2月10日

    これは彗星のように輝やきながら飛び去った彼女の人生の軌跡をたどる物語です。

    その8 、突然の死

     

    1月にインフルエンザに罹ったあと、生理の出血が止まらなくなり、

    ピルで出血を抑えたあとひどい生理痛が始まりました。

     

    顔色も青くなり、おなかを押さえながら患者さんの相談にのっていました。

    生理中以外でも痛むのは、おかしいから早く病院で診てもらうよう言いました。

    しかし、長女の妊娠以来かかっている大学の産婦人科教授をとても信頼していましたので、

    予約がある1か月先まで鎮痛剤を飲んで我慢しながら仕事をしていました。

     

    私は、その間不安にさいなまれていました。

    そしてやっと予約の4月9日、病院に行きましたら、その先生は転勤されていて、

    ほかの教授が見てくれました。

     

     

     

     

     

     

     

    血液検査も特に異常がなく、

    「エコーでは月経血がたまっていて出そうとして痛みを起こしている、」という診断でした。

     

    そしてそれほど痛むなら子宮を全摘する以外はない、と言われ、

    第2子を希望していた彼女は、それは決心がつかない、とほかの病院を探し始めていた4月21日、

    突然意識を失い、元の勤務先日大板橋病院の救命救急センターに担ぎ込まれました。

     

    倒れる前日まで、国際薬膳師の受験勉強をし、結婚式にも出席していました。

    40度の発熱と血圧が極度に低下し30しかない、敗血症の疑いがある。

    多臓器不全で死亡するだろう、と言われました。

     

    全身の粘膜から出血しているので原因を調べたい、と腹部の切開をし、

    子宮からマヨネーズのような3cm大の黄色い膿の塊が出てきました。

     

    抗生物質も全く効果がなく、毎日全身から出血が続き、

    出血をおさえるガーゼを交換するため5回も開腹手術をしました。

     

    その間出血が止まらないのに止血剤が使えない、

    全身の微小血管内で血液の凝固が起こる播種性(はしゅせい)血管内凝固が始まり、

    ただ出血をおさえるガーゼを交換する開腹手術しか手立てがないようでした。

     

    私は中国へ何度も行って、中医学(漢方)を長年勉強してきました。

    漢方薬には止血しながら体内の血栓を溶かすものがあります。

    また中国では漢方薬の点滴や注射が日常使われています。

     

    何とか漢方薬を使えないか病院に相談してみましたが、

    意識がない段階では無理だと言われ、使えませんでした。

    漢方薬が日本でも点滴や注射になっていたら少しは役立ったかもしれない、と無念です。

     

    しかし病院挙げての必死の治療のためか、知人の気功師が病院に来て、

    一生懸命気功をやってくださったおかげか、今考えると不思議ですが一時は意識を回復し、

    4歳になったばかりの子供の歌声と「ママ、がんばってー」というスマートホンの声に耳を傾け、

    希望が出てきたこともありました。

     

    5月10日の妹の誕生日もがんばってくれて迎えることができたのですが、

    その翌日5月11日さすがに元気な人も力尽きて亡くなりました。

    化膿したところから猛毒のエンドトキシンが全身に回った、

    エンドトキシンショックによる敗血症でした。

     

     

     

     

     

    死の恐怖も苦しみもなく、すっと魂が体から抜けていったような感じでした。

     

    ・・・・翌5月12日の母の日。

    彼女が生前頼んであったハイビスカスの鉢植えが

    「おかあさん、ありがとう」という彼女の手書きのメッセージカードと一緒に我が家に届きました。

     

    毎年無事に冬越しし、夏の太陽に負けない、

    彼女のような真っ赤な大輪が毎年夏になるとたくさん咲き続けています。

    (写真説明 彼女が贈ってくれて3年目のハイビスカス)

    * *次回は「その9、仲間の応援」です。* *

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